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作者
Tommy6
原作
涼宮ハルヒの憂鬱
ジャンル
日常,非日常
カップリング
-
掲載
2007/09/18(Tue.)
更新
-
ベタっちゃあベタ [前編]
驚きの体験エピソード――――――――――――――なんてのは、十数年生きてきた俺たち高校生ならば、程度の大小こそあれど誰もが一つは持ち合わせているであろう。
俺の場合、宇宙人・未来人・超能力者との邂逅、世界は改変されるし過去にも飛ばされる、宇宙人に襲撃されたかと思えば身の丈の数倍はあろうかというカマドウマとの戦闘に巻き込まれる・・・・・・・・・
など、普通の人間が数百回転生したところでまず遭遇することはないであろう光景に幾度となくお目にかかり、既に人生録が電話帳か広辞苑並みの密度と膨大さに達しつつあるあたり、やはり一般人を自称するのはもう無理なんだろうと自覚するのだが。
そしてまた今回、俺の人生録に驚愕と新鮮さと困惑で彩られた新たなページが追加されることとなる―――
□
時は午後四時手前、定時の団活終了にはまだ幾ばくかの余裕があるものの、取り敢えずは前述のような奇天烈イベントが起こることもなく今日一日を平穏無事に終えられることがほぼ確定的となり、そのありがたさと大切さを人一倍噛み締めながら古泉といつも通りボードゲームに興じていた頃――――――――――――
「キョン、ちょっとこれ取ってくれる?」
ほとんど奇襲と言っても差し支えないような勢いで部室へ到来し、団長席に腰を据えて以降驚くほど真剣な面持ちで延々一時間以上何かを考え込み続けた後、おもむろに立ち上がったハルヒがそう言いながら人差し指で叩いていたのは、文芸部室を不法占拠して以来、主に交渉という名の脅迫を用いて入手してきた品々のうち、特定シーズンでしか用の無いもの、ハルヒが飽きてしまったものなどを詰めたダンボール郡のうちの一つだった。
基本的に、中に入っているものの約半分はこれから先まず使うことのないであろう品々なので処分してしまって構わないような気がするのだが、「一つ一つが私たちSOS団の足跡なんだから捨てるなんてもってのほかよ!それに、要らないと思う物でもこれから先必要になるかもしれないしね。」と言われ、結局そのまま放置することになったのを覚えている。
普段使わないものが大部分を占めているため、簡単に手の届く場所にある必要は無いとの判断から、蔵書の7割以上が日本語以外の言語によるもので占められている長門御用達本棚の上に置いているのだが、こいつはそんなものを俺に引っ張り出させて何をするつもりだと言うのだろうか?
「ふふん、それは後のお楽しみよ。それより、私じゃ手が届かないからあれ、早く取ってよ。」
その得意げで不敵な笑みに一抹の不安を抱くのは俺だけかね?
こいつの企んだことが諸手をあげて歓迎できるような内容だった覚えが一度としてないのだが―――――
と言ってもまあ、ここでごねた所でロクな結果を迎えないのは目に見えてるし、箱を取るだけなら害もあるまい。
そう思い、俺の頭上に鎮座する薄茶色の箱へと手を伸ばしたわけなのだが、この箱、使用頻度や重量、サイズを一切考慮に入れず片っ端から無造作に物を詰め込んだため、場合によってはかなりの重さに達しているわけで。
案の定、何個かあるダンボールのうち、適当以外の要素を一切含まないであろう基準でハルヒによって選ばれたそれは、俺の両掌で掴み軽く引っ張ってみても、全く動く気配が無い。
本来なら、ここで作りのしっかりしたテーブルなり何なりを持ってきて、その上に立って取ればいいんだろうが、いちいち物を動かすのも面倒だった上、俺の背中で早くしろだの何だのと喚き散らしている人間もいたため結局体重任せにやることにしたのだが―――――――――――
適当に物が入っている以上、箱の重量バランスも思い切り偏っている可能性は十分あるわけで。
もし、その箱の重さの大半が俺から見て手前側にかかっていて、そこに無理な力任せによって多少なりとも勢いがついていたとしたら?
当然、米袋数個分はあろうかというそれは、そのまま弧を描くようにして俺を引っ張りながらハルヒのほうへと向かっていくわけで。
視界がブラックアウトする直前、とっさに後ろを振り向こうとした俺の目に映ったのは、驚きの表情で埋め尽くされたハルヒの顔だった―――――――――
□
・・・・・・・・・・・・・・知らない天井だ・・・・・・・・
なんて某汎用人型決戦兵器の少年パイロットが放った台詞が一瞬頭に浮かんだが・・・・・・・・・・・ここは確か・・・・・・・・・保健室だったな。
頭はズキズキするし、意識もまだはっきりしないが、何が起こったかはしっかりと覚えているし、ハルヒ絡みでここには何度か足を運んだことがあるからな。
「お目覚めになりましたか?」
こういう時、お前の声を聞くと取り敢えず・・・・・安心・・・・・・できる・・・・・・・の・・・・・・・・は・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・?
はて・・・・・・・・・・俺はこんなに女じみた声をしていただろうか?
変声前の中学生ならともかく、まるでハルヒのような・・・・・・・・・・・・・
「百聞は一見にしかず―――――――――とでも言いましょうか。僕があれこれと説明するよりも、あなたに突きつけられた現実、その目で直接確かめたほうがよいでしょう。」
俺が現在進行形で持ち合わせている違和感に対する明確な回答を知り得ているであろう男が、いつに無く困惑した表情で俺の眼前へと鏡を差し出す。
刹那―――――――――起き抜けの時のような、頭にまとわりつく感覚は完全に吹き飛んだ。
鏡に投影されているのは、俺が十余年付き合ってきたそれではなく、ここ数年になって最も視界に入れる頻度が増加したであろう人間の顔――――――――――
涼宮ハルヒがそこにいた―――――――――――――
□
さて、何から説明してもらえばいいんだろうか。
「簡潔に言い表すならば、あなたと涼宮さんの身体が入れ替わってしまった・・・・・といったところでしょうか。」
えらくあっさりとした回答だな。
「今の僕には、あなたの身に起こった現象について説明するだけの知識はありませんので。とりあえず、病院に行く必要があるようなダメージを負っていないことは、世界のどんな名医でも敵わないであろう長門さんによって確認されていますのでその点はご安心ください。」
ほお、何時もならえらく解りづらい比喩を織り交ぜて解説したがるお前にしちゃ珍しいな。
で、これ、どうやって元に戻すんだ長門?
「・・・・・・・・・・現時点で、あなたと涼宮ハルヒ両名に発生した問題に対する具体的な解決法の提示及び実行をすることは出来ない。」
・・・・・・・・・・えーっと・・・・・・・・・。長門さん?
「私を含め、情報統合思念体にとって人間の精神構造や思考プロセスはほぼブラックボックスに近い存在。体組織の損傷やウイルス・細菌の侵入等であれば即座に対処可能だけど、今回は違う。私が今までに蓄積してきた経験を基にして理論を構築する、ということも一つの手段として存在するものの、不確定要素があまりにも多すぎる。その状況で実行に移し失敗すれば、あなたと涼宮ハルヒの精神崩壊という最悪の結果に帰結してしまう可能性がある。」
・・・・・・・・・・・つまり・・・・・・打つ手が無いってことか?
「そう。」
平時の6割減ぐらいの声量で淡々と語る長門の顔は、どことなく申し訳なさそうだった。
どうすんだよおい?
俺がこの体で過ごすのはいろんな意味で危険だし、何よりもハルヒが目を覚ました時が一番問題だ。
この状態を一体なんとハルヒに説明すればいい?中途半端なごまかしが通用するような手合いじゃないぞ、あいつは。
「ええ確かに。聡明な彼女に対して納得のいくような説明をするのはかなり難しいでしょうね。下手を打って不信感を抱かれるより、元から何も解らないということにして一緒に悩む、と言う風にしたほうが良いでしょう。」
そりゃあ、一般人が相手ならそれでいいだろうさ。[普通]はこんな目に遭えば大抵は混乱してオロオロするか恐慌状態に陥るだろうからな。
しかし、相手はあのハルヒだ。解決するまで黙って大人しくしているとは到底思えないんだが。
「不安要素は多々ありますが・・・・・・・・、そこはあなたの手腕でどうにかしていただくしかないかと。」
おい待て、俺に全て押し付ける気か?
「基本的にはあなたと涼宮さんの問題ですからね。フォローしようにも限界がありますよ。まあ、それが不幸中の幸いだったという側「う・・・・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・」・・・・・・・・どうやらお目覚めになったようですね。」
ああ、わかったからそんな促すような目でこっちを見るんじゃない。
後々のことを考えると頭が痛くなるが、取り敢えず、これだけは言わせてくれ。
やれやれ―――――――――――――――――――
□
「で、どうすんのよ?これから。」
そのままそっくり同じ質問をお前にしたいぐらいなんだ。俺に聞かないでくれ。
あれから約一時間。とにかくこのことを世間に公表しようと息巻くハルヒに対し、俺・朝比奈さん・古泉の三人で何とか説得を試みるも全く聞く耳を持たず途方に暮れていたところ、
「彼に迷惑がかかる」
と、それまで沈黙を守っていた長門がボソリと言い放った一言によってあっという間に大人しくなったため、当面の問題は解決したと判断、保健室に残っているのは俺とハルヒの二人だけである。
「このまま家に帰るわけには・・・・・・・いかないわよね」
いかないだろうな。
俺がハルヒの体、ハルヒが俺の体で居る以上、俺は涼宮家へ、ハルヒは俺の家へと帰宅しなければならないわけで。
いくら毎日顔を付き合わせているとはいえ、互いの家に行ったことなど両手で数えるほどしか無いから、普段家でどんな生活を送っているかなど知るよしもない。
そんな中で十年以上一緒に過ごしてきた親の居る所へノコノコと行けば、不自然極まりない取り繕いのハルヒによる俺役、俺によるハルヒ役で無用な心配を与えるだけだろうし、他にも問題が山積している。
今日に限って家族全員旅行へ・・・・・・・などという都合の良い展開が待ち受けているわけでもないしな。
「うちも、今日は家族全員家に居るわ。」
八方ふさがりだねこりゃ。解決するまで家に帰らない――――――――――という手も無いことは無いが、明確な事由説明の無い外泊を認めるほどうちの親は放任主義的ではないし、そもそもいつ解決するのか不明とあればなおさらだ。長期休業期間中なら、SOS団の合宿とでも言えばしばらくの間家を離れられるんだが。
「うちは・・・・
そう言いかけた所で何かを思いついたのか、意地の悪い笑みを浮かべるハルヒ。それが俺の顔ってのが未だに慣れないが。
「ねえ、キョン、今日あんたの家来なさいよ。」
・・・・・・・人称がこんがらがりそうだが、つまり、俺にこの体で俺の家へ行けと?
「そう。おばさま私のこと知ってるし、いつでも来て良いって言ってるし。二人で同じ家に居れば、フォローしながらなるべく目に付かないように行動して上手く切り抜けられると思うんだけど。」
その根拠は?
「なんとなく。」
なんとなくってなんだ、なんとなくって。それに、いくらお袋がいつ来てもいいと言ってたとはいえ、二人して帰った上に泊っていくってのは流石に・・・・・・・・。
「何か問題あるの?」
お前なぁ、絶対解ってて言ってるだろ?
「まぁね。さ、そうと決まったらさっさとあんたの家行くわよ!」
おい待て、いつ俺がその提案に賛同した?
言うが早いか、俺の手を取って引きずるようにして歩き出すハルヒ。俺の体になっているせいか、いつにも増して力が強い。
というか、えらくぞんざいに扱っているのが自分の体だっていうこと忘れてないかこいつ?
そして、このまま家に帰ると非常に困ることになるということを――――――――――――――――
一万ヒットキリリク作品、身体入れ替えストーリー前編となります。
本来は一ページで終わる予定だったのですが、暑さ嫌いにとって〜シリーズのように、話を進めるうちに収拾がつかなくなって分割するに至りました。
今回も何編出来るのか完成するまでわかりません。
まぁ、9/26で終了するはずだったバイトがもう終わってしまって突然暇になったので、それなりのペースで書き続けられるとは思うのですが。
もしよろしければ、拍手や簡易掲示板等で感想等いただければ、と思います。
それではまた、次回作にて。
R18展開も一瞬浮かんだけど、問題が多すぎるので即座に選択肢として消えたのは内緒w
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