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作者
Tommy6
原作
涼宮ハルヒの憂鬱
ジャンル
恋愛
カップリング
-
掲載
2007/08/31(Fri.)
更新
-
それは勇気ある挑戦か、それとも無謀な賭けか
「有希とみくるちゃん。」
それは、当事者にとって見ればごく普通の、傍から見た一般人にとっては非常識極まりない団活を終えたある日の放課後―――――――――
「ちょっと話があるから残ってくれる?」
新たな戦いが、幕を開けようとしていた――――――――――――
□
「おいおいハルヒ。長門と朝比奈さんを残してどうするつもりだ?また妙なコスプレさせるつもりじゃないだろうな?」
やっぱりと言うかなんと言うか、やっぱりキョンが食って掛かってきた。
前々から思うんだけど、キョン、私に向けるのとは別な感情を有希やみくるちゃんに持ってる気がするのよね。
なんかこう、私に言えないような何かで繋がっているような感じ。
すごく不安になる――――――――――ってわけじゃないけどやっぱり気になるから、一度問い詰めたことあるんだけど、「いつか全部話してやる。」って何も教えてはくれなかった。
だけど、見たことないぐらい真剣な顔で話してくれたから今はそれを信じて聞かないことにしてる。
でもやっぱり、こういうキョンの姿を見るのはあまり気分の良いものじゃない。
「いつ私が妙なもの着せたって言うのよ?それに、さっきも言ったけど私は二人と話がしたいだけ、別に取って喰おうってわけじゃないんだから、ほら帰った帰った!」
「っておい。わかったわかった。わかったから鞄ぐらい持ち帰らせてくれ。」
「じゃーねー。」
ぶつくさ言ってるキョンを無理矢理追い出して、部室に残ったのは私と有希、みくるちゃんの三人だけ。
「さて、邪魔者も居なくなったことだし、本題に入るわね。」
本当は追い出したキョンも十分関係あるけど、絶対この場に居させることは出来ない。
「私は駆け引きがどうのとかまどろっこしいのは嫌いだから単刀直入に聞くけど」
互いに相手の動向を窺って牽制し合うような真似はしたくないから、
「有希とみくるちゃん―――――――――――」
私の心にずっと引っかかっていたことをそのままぶつける。
限りなく白に近い、本当に薄ぼんやりとした疑念から次第に確信へと変わってしまったそれを―――――
「キョンのこと好きなの?」
□
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
もう、10分は経ったかしら?
みくるちゃんは完全に下を向いちゃって、こっちからはどういう表情をしているのかよく判らない。
有希も、出会った頃からは考えもつかないような驚きの表情――――――と言っても、有希をよく知らない人には、十分無感情に見えるだろうけど―――――――を一瞬浮かべたけど、結局いつもの無表情に戻って時が止まったかのようにただ座っている。
そうやって、痛いほどの静寂さと重苦しい雰囲気に部室が包まれている中、最初に口火を切ったのは以外にも有希だった。
「あなたの言うとおり、私は、恐らく彼に対して恋愛感情、もしくはそれに準ずる感情を抱いている。」
一切の淀み、躊躇の無い肯定。
ただ私の目を真正面から見つめ、有希は言い放つ。
「高校入学当初、私は、現在自分が置かれている状況、自分の取り得る行動による未来分岐予測、自身の目的などの要素から最も合理的な選択肢を選び行動していたし、それが唯一無比のものであると信じていた。」
「でも――――――――毎日この部屋で活動を続けていくうち、私の思考回路にそういった合理的判断を阻害する因子が現れ始めた。その存在に気がついたばかりの頃は、ごく軽微なノイズレベルに過ぎなかったため気にも留めなかったが、それが次第に強固なものへとなるにつれて、自分では明らかに非合理だとの判断を下している選択肢を採るようになるなど、不可解な行動を取ることが頻発するようになってきた。対処しようと試みたものの、如何なる手段を以ってしてもその「輪郭の不明瞭な何か」を数値化することは出来ず、段々と私の中で抑え切れなくなりついに許容限界へと到達、結局それが原因で彼に多大な労を強いる結果となってしまった。」
「彼の判断により最終的には元の鞘へと収まる格好になったけれど、その時彼は、真正面から対立すれば勝算など限りなく0に等しいであろう強大な存在が相手であっても私を守ると言ってくれた。」
「客観的に見れば蛮勇以外の何物でもないかもしれない。」
だけど――――――――――――――――――
「嬉しい――――――――――――――――――」
「この言葉が驚くほど自然に私の中へと染み入ってきて、体を包み込んでいくような感覚にとらわれた。」
「そして、これがおそらく、彼の言うところの「感情」というものなのだろう、とおぼろげながら理解することができた。」
あとの顛末は―――――――――――――聞かなくても解るわね。
まったく、あのアホたれは一度絞め落としたほうがいいんじゃないかしら?
「私も、キョン君のことが好きです。」
いつの間にか顔を上げてこっちを向いていたみくるちゃんも、真剣な眼差しで明確に言い切る。
いつもの怯えたような表情は完全に霧散していた。
「私も基本的には長門さんと同じようなものですね。二年に進級してここに連れて来られた時、既にキョンくんは私にとって重要な存在でした。でも、それはあくまで私の目的を達成する上で、ということでしかなくて。」
「だけど―――――――――キョンくんは何の力も無い、ただ重荷にばかりなっている私を大切だと言ってくれた。必要だと言ってくれた。」
「キョンくんは、すごく優しいです。本当に優しくて―――――――――――優しすぎるんです。誰も好きにはならないと固く誓ったはずの心にあっさりと入ってきて、私が欲しいと思うものを当たり前のようにくれちゃう。本当に―――――――――――――ずるいくらいに。」
・・・・・・・・・・有希もそうだったけど、ノロケ話聞かされているような感覚がしてならないのは気のせいかしら?
まあ、二人ともキョンにベタ惚れってのは判ったからいいんだけど。
ただ、気になることが一つだけ――――――――――
「二人がキョンを好きだってことはよーーーく判ったんだけど、だったらなんでキョンに告白しないの?」
そう、それは私にとって当たり前の疑問。
自分の心に抑えようのない想いが芽生えたなら、それをそのまま相手にぶつけてしまえばいい。
まあ、二人の答えもなんとなく予想がつくんだけど。
「それは出来ない。」
「確かに、彼という存在は現在の私にとって最も大切であると言っても過言ではない。」
「けれども、数え切れないほど様々なことを私に教えてくれたあなたも、彼と同様私にとって何にも代えることのできない大切な存在。そんなあなたを裏切るわけにはいかない。」
「私も、出来ません。」
「長門さんが言うように、キョンくんは私にとって一番の人です。でも、涼宮さんも私にとっては一番の人なんです。そんな涼宮さんがキョンくんを好きで、キョンくんも涼宮さんを好きなのに、告白なんてするわけにはいきません。」
うん、見事予想通り。
やっぱり、二人とも私に遠慮してる。
でも、私はそんなの望まない―――――――――――
「有希、みくるちゃん。もし、二人が私に裏切りをしていたとするなら、それは、その気持ちを誰にも言わず心にしまい込もうとしていたことよ。」
「そうやって私に遠慮して、自分の気持ちを無理やり押さえ込もうとしないで。人間の感情、特に恋愛に関わることなんて、理屈なんかで片付くようなものじゃない。好きなら好き、それでいいじゃない。この三人の中で、あのバカキョンを最後に振り向かせるのは誰か競争すればいいだけなんだから。」
「だから―――――――――――――
宣戦布告――――――――――――――
もし二人がキョンを本気で好きだって言える自信があるんなら、正面からぶつかってきなさい。
受けて立つから―――――――――――――――――――
なかなかうまくいかんなぁ。長門とみくる出したはいいけどえらい扱いに困るし、心情描写思い通りにいかないし。
精進あるのみ、ってところかね。
読んでたらわかると思いますが、ハルヒはキョンが何かを隠していることに気がついています。でも無理に聞こうとしないのは、ハルヒが成長したから、ということにしといてください。
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