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作者 Tommy6 原作 涼宮ハルヒの憂鬱
ジャンル 恋愛,日常
カップリング キョン-ハルヒ
掲載 2007/05/24(Thu.) 更新 -
メイドインSOS
時はあの画像流出騒動の数日後――――――――

流出先の人間が皆良識を持ち合わせていたことが幸いし、SOS団員及び名誉顧問鶴屋さん以外にあれが流布することも無く安心したのも束の間、俺たちが下校しているところを目撃していた同じ学校の生徒によって「俺と涼宮ハルヒが付き合っている」という、それまでは憶測の域を出なかった噂が確定事項として光のごとき速さで学校中の人間へと伝播し、どこへ行っても周囲の視線を集めるようになった頃の話である―――――



元々平凡な一般人かつあまり目立ちたがるような性格ではない俺にとって、ここ数日は居心地が悪いことこの上なく、毎朝起きるたびに学校へ行く気力が皆無と言っても差し支えないレベルまで削がれるのだが、その一方で、これだけの注目を一手に預かっていることを心のどこかで誇らしく思っている自分がいたり、ハルヒはハルヒで、


「これは寧ろ歓迎すべき状況ね。これだけ全校生徒の知るところとあれば、変な虫が寄ってくることだってまず無くなるというものだわ!」

と全く意に介していないし、あまつさえ俺もその主張に対して特に異論を挟もうと思わない――――むしろ大筋で納得している――――あたり、だんだんハルヒ色に染められつつあるような気がしないでもない。



そんな毒にも薬にもならないようなことを考えつつ、俺はもはや本能レベルで体に刻み込まれた団活という目的・理由共に永久不明な行為のために部室棟の中を歩いていく。

リノリウムの床、いたるところの塗装がはげた壁、同じく部室棟を利用していると思しき名も知らぬ生徒の顔。

日々変遷していく日常の中で、変わらず俺を出迎えてくれる風景に安心感を覚えながら、導かれるようにして向かうは、名目上文芸部室、その実SOS団アジトとなっている部屋。


部屋自体はそう遠くもなく、さほど時間もかからずに到着する。そしていつも通り、露出狂でもないのになかなかお着替えの際に部室の鍵を掛けるということを覚えてくださらないSOS団専属メイドさんのためにドアをノックしたのだが―――――




「誰?キョン?」

扉一枚隔てた向こうから返ってきたのは、普段なら良からぬ事の画策とその実現のために奔走しているが故に、俺たちの中で最後に到着する人間の声。珍しいこともあるんだ。

「ああ。」

「もうちょっと待ってて。もう少しで終わるから。」

ん?・・・・もう少しで・・・・・・・終わる?・・・・・・・・ははあ、さてはハルヒ、お前また朝比奈さんに新しいコスプレでもさせてるんだな?お願いだから、あんまり無茶な格好させて朝比奈さんを困らせないでくれよ。

「違うわよ!これはっ・・・・・・。・・・まあ、いいわ。ちょうど終わったから入っていいわよ。」

いったい何が違うんだ?まあいい、それはこの扉を開けて確かめればいい話だ。


今度のコスプレはなんだろうな?取り敢えず、異常に露出度が高かったり、妙に扇情的だったりしたら止めさせねばなるまい。いくら部室内とはいえ限度ってもんがある―――――――



などと、朝比奈さんがハルヒに新しいコスプレをさせられているもんだと思い込み、ある種の期待と一抹の不安を抱えながら扉を開いた俺の目に飛び込んだのは―――――――





全身をメイド装束に包み、髪型は前回よりは遥かにましにはなったもののやっぱり中途半端なポニーテール、腰に両手を添えて仁王立ちし、これまた極上スマイルを浮かべている我がSOS団団長――――――――






――――――――涼宮ハルヒ――――――――その人だった。




「・・・・・・・・・・。」

台詞が全てリーダになってしまっているが、そこは勘弁してほしい。なんせ、俺の眼前に突きつけられた光景は、予想の斜め45度上を行く完全想定外のものであり、脳内思考回路は完全熱暴走状態なんだからな。


ただ呆然と立ち尽くす俺に不満を抱いたのか、ハルヒは、

「ちょっとキョン!あんたの希望通りにしてあげたのよ?少しはなんかリアクションとったらどうなの?!」

と、口をアヒルみたいにして文句を言っている。そう言ってくれるな、こちとら全ての現象を涼しい顔で受け流せるほど器がでかいわけじゃないんだよ。

―――だがしかし、ハルヒの言うことももっともだ。せっかくの好意、きちんと受け取らねば失礼というものだろう。

「あ、ああ、似合ってるぞ。」

・・・・・・・・・・・・・我ながら情けねぇ。あれだけ引っ張っておいて出てきた言葉がこれかよ。もう少し気の利いた台詞でも出ないもんかね全く。

それに、こんなんじゃこいつも納得せんだろうに、いったい何言われるやら。



「よろしい。んじゃそこ座ってなさい、お茶淹れるから。・・・まあ・・・、みくるちゃんほど上手くはいかないと思うけどね。」



てっきり、不平不満の言葉を浴びせられるだろうと思っていたのだが、どうやらハルヒは満足したらしく、そう言うだけでそのままお茶を淹れる作業に取り掛かってしまった。

ある意味肩透かしを食らった感も否めないが、それよりも取り敢えず座ることにしないか、俺?このままここに突っ立ってるとかなり間抜けに見える気がするんだが。





俺の視界では、近頃はもう見慣れてしまったメイドさんが、いそいそとお茶を淹れるというこれまた見慣れた光景が繰り広げられているが、いつもと決定的に異なるのは、それが麗しき上級生朝比奈さんではなく、涼宮ハルヒである―――――――ということだ。

そうやってボーっと眺め続けていくうちに、俺の脳も段々と平時の機能を取り戻し落ち着いてきたので、改めてハルヒの動作を観察してみる。


あいつは自信が無いような口ぶりだったが、お茶を入れる手際やら身のこなしなど、あいつの姿を見る限り結構板についている。まあ、メイド+ポニーテールという属性のために、俺の心理に強力なバイアスがかかっている可能性も否定できんがな。

・・・・それにしても・・・・・、週に一度ぐらいはこうしてもらえないもんかね?そうなれば、それが俺の精神安定に寄与すること大であり、こいつの無理難題に対しても、それはそれは寛容になれるというものなんだがな。



「はい、できたわよ。」

そうこうしている間に出来たようで、俺の目の前にお茶が差し出される。延々あいつの観察をしていて手持ち無沙汰だった俺は、すぐにそれを手に取って口へと運ぶ。

・・・・・うむ、美味い。流石に朝比奈さんクラスとは言わんが、それでも十分だ。というか、お茶汲みを日課としているわけじゃない人間がここまでの物を出せたんなら十分すぎるぐらいだ。ったく、相変わらず何やらしてもソツなくこなしやがるなこいつは。こいつに苦手なことなんて存在するのか?


そんな感じで今更になって世の不条理を嘆きつつ、のんびりとお茶を堪能していたんだが、ふと現在のこの状況に対して違和感を抱いた。無論、ハルヒがメイドになっているということを除いてだ。

その違和感の正体に、俺はさほど時間をかけずに気が付くことができた。



それは、いつもこの部屋で石造の如く何時でも同じ場所に鎮座し、ハルヒのインチキパワーを除けばSOS団随一の能力を誇る元文芸部員、長門有希が居ないということだ。

そんな大層なことか?と思う人もいるかもしれんが、SOS団が文芸部室を奪取して以降、こいつがこんな時間になるまで居なかったことなど一度もなかった。朝比奈さんや古泉なら、清掃やらクラスの用事やら幾つか理由も思い当たるんだが、情報操作能力を有する長門がハルヒの観察をほったらかしにしてクラスの用事なんぞにかまける可能性は低いわけで、そうなると考え得る可能性が一つある。それは、

長門の身に危機が迫っている―――ということだ。

――――――ただ――――――、引っかかる点も幾つかある。まず、長門に何かあったというのに何故全く俺に情報がもたらされないのか?ということ。それと、長門が居ないことにハルヒが何の関心も示していないことだ。確かに長門は恐ろしく存在感が希薄になることもあるのは否めないが、流石に着替えの時点でいつも居るはずの人間が消失していることに気が付かないほどあいつも薄情ではない筈だ。そこで、

「そういえば、他の団員はどうしたか知ってるか?朝比奈さんや古泉ならともかく、長門がこんな時間になってもまだ居ないというのは非常に珍しい気がするんだが。」

と、問うてみたところ、ハルヒはさも今思い出したような表情で、

「ああ、みんなには事前に団活は休みって伝えてあるわ。」

・・・・・なんですと?休み?つうかおい、何故だ?いやまあ、俺の考えが杞憂に終わったらしいということは喜ばしいのだが、その前に、本日の活動がないのに何で俺とハルヒだけのこのこと部室に顔を出せねばならん。


俺の至極真っ当な(本当か?)質問を受けたハルヒは、ほんの僅かな躊躇の後、

「いいでしょ!あんただけに見せたかったのよ!文句ある?!」


そう吐き捨てて、そのままそっぽを向いてしまった。



そして、そのままハルヒが何も喋らなくなったため、色々と思考を巡らしていたのだが、ふとある考えにたどり着いた。

・・・・・・なるほど、こいつ何日か前から準備してやがったな?事前に団員に根回しをし、更に、普段言い負かされてばかりで癪だからそれに対抗しようと、多少のことでも動じないように対策してやがったな?普段なら、似合ってるなんて言おうものなら顔中真っ赤だろうからな。

だがなハルヒ、残念ながらお前の目論見は半分成功で半分失敗だ。お前は俺を驚かせて安心しているようだが、耳が赤くなっているのを俺が見逃すとでも思っているのか?だいたい、そんな付け焼刃的な耐性、いつまでも持つと思うなよ?

そうとわかったら俺もやられてばかりじゃない。お前が俺に丸め込まれてばかりいるのが不満なように、こっちだって驚かされっぱなしは嫌なんだよ。だから――――――





「ハルヒ。」

「なによ。」








「可愛いぞ。」




ボンッ――――とそんな音が聞こえそうな勢いで顔を真っ赤にしたハルヒは――――――



「な、な、――――――。」


と、結局いつも通りになっちまった。

まだまだだな、ハルヒ。






それから約1分、ハルヒが正気を取り戻すまで、俺は馬鹿みたいにこいつの顔を眺めていた。












こいつが慣れちまったら、完全に尻にひかれるなぁ――――――――なんて考えながら。



















変わり続けるける日常――――――その一コマ

こんにちは。最近、道に落としたせいで一ヶ月も経っていないのに携帯が傷だらけになり意気消沈しているTommy6です。
今回は、前作の後日談という位置付けで展開していきました。いかがでしたでしょうか?キョンが、鋭いようで肝心なところは超朴念仁だったりハルヒが謎性格だったりするのはお許しください。

今回の反省:
文章力・・・・

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