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作者
Tommy6
原作
涼宮ハルヒの憂鬱
ジャンル
恋愛,日常
カップリング
キョン-ハルヒ
掲載
2007/05/17(Thu.)
更新
-
不注意が招いたのは・・・
「ちょっとキョン!もっとしっかり支えなさいよ、私が落ちちゃうじゃないの!」
そう文句を言ってくれるな。別段俺は体力があるわけじゃないんだ、こうやって歩くのだって結構きついんだよ。
「あんた・・・・・、私が重いって言いたいの?!」
断じてそんなことはないと保証しておいてやろう。むしろ、想像よりも軽くて驚いているぐらいさ。だが、だからと言ってお前がうちの妹並みに軽いわけでも無いだろう?その妹でさえ、俺には背負うのが堪えるんだ、少しは勘弁してくれ。
「・・・・・なんか、微妙にデリカシーの無いこと言うわね。少しは女心ってものを察したらどうなのよ?だからあんたはいつまでたってもバカキョンなのよ。だいたいねぇ、あんたはいっつも――――――
とまぁ、後ろでハルヒが俺に対する不満をたれ始めたところで、そろそろ読者の皆様への説明責任を果たさねばなるまい。
そもそも事の発端は―――――
今日も今日とて朝から、俺の気分とやる気を日本海溝奥深くへと沈めてくれるかのようなハイキングコースを登りきり、相も変わらず何を企んでいるのか判らない――――判りたいとも思わんがね――――突発的台風女の前席へと赴く。
「よう、ハルヒ。」
「おはよ。ねぇキョン、次のみくるちゃんのコスプレ何がいいと思う?ネコミミ?婦人警察官?それとも今度は有希にさせてみるとか?」
毎度毎度だが、朝比奈さんは着せ替え人形じゃないんだ、オモチャにするのは止めなさい。無論長門もだ。それと、お前の頭の中には自分でするという発想は無いのか?
「何言ってんの。私は団員のコスプレプロデュースという大役を担っているのよ、自分で着ちゃ意味が無いじゃないの。」
・・・・そうか、それは残念だな。お前がメイド衣装を着たりしたら、それは似合うと思うんだが。
「―――――っ!?な、なな、何を言うのよ?!」
いやいや、冗談なんかじゃないぞ?そうだな、それにプラスしてポニーテールなんかだったりしたらもう最高だな。
「――――――――!?―――――――?!」
・・・・・ふむ、顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。金魚みたいだな、ハルヒ。
ハルヒがこうなってしまうと、1時間目が始まるあたりまで元に戻らずオーバーヒート状態が続くので、俺はそれまでクルクルせわしなく変化するこいつの表情を眺めるのがいつものパターンだ。
ハルヒと俺のこのやり取りは、半月ぐらい前から追加された新しい朝の日課だ。もともとは、俺が何の気無しに言ったことでハルヒが今まで見たことも無いような狼狽ぶりを披露してくれたのがきっかけだったんだが、思わぬあいつの一面を見せられて気を良くした俺は、それから毎日、こうやってハルヒの顔を赤くして楽しんでいる。
・・・・・まあ、こいつも懲りずに毎日俺に話しかけてくるあたり、満更でもないみたいだがな。
俺達の方に微笑ましいものを見るような視線を送ってくるクラスメイトが何人かいるが、んなもん俺の知ることではない。まったく気にならないと言えば虚言になるが、そんな羞恥心など、こいつを前にしたら跡形も無く吹き飛ぶね。無論、ハルヒだってそうだ。そんなもの、こいつにとっては路傍の石以下の重要性しかないだろう。
そんなことを考えつつ、ハルヒの顔を観察していると、担任岡部が到着してSHRに突入。正気を取り戻したハルヒが、後ろでバカキョンだのアホキョンだのエロキョンだのとブツブツ呟いていたが、大部分は完全な濡れ衣だ。まったく身に覚えが無い。A4用紙10枚にわたる抗議文を署名捺印付きで提出させてくれ。
そしてそのまま流れるように1時間目・2時間目に突入。言うまでも無く、俺とハルヒは揃って睡眠学習法の立証者となっていった。進度から取り残されての諦めか、易し過ぎるが故か―――という違いは有るがな。
―――――そして、3時間目、今回の出来事の原因となった体育。
この高校で行われる体育は当然のことながら男女別なのだが、スペース不足と体育教師不足とが相まって、男女交互に競技を行う形式になっている。俺は別に教員の採用事情に明るいわけでもないし、体育の時間のほぼ半分を休憩に費やせるのだから、この制度に文句をつけるつもりは無いが、体育教員1人を増やすぐらいできないもんかね、この学校は。スペースは工夫すれば何とかできるわけだし。
そして俺は現在目下休憩中で、薄ぼんやりと1500m走に励む女子の姿――――ほとんどハルヒだが――――を眺めている。しっかし、改めてあいつの身体能力の高さには驚くね。流石に陸上部と思しき女子の後塵こそ拝しているものの、それを除けば本当にぶっちぎりだ。いったいあいつの底ぬけエネルギーはどこから沸いてくるんだ?どこぞ大学病院にでも連れて行けば、人間の運動生理学の特異事例として重宝がられるかもしれん。
解の出ない疑問に頭を回しつつハルヒを眺め続けていたところ、不意に――――本当に偶然の産物として――――あいつと目が合い、実時間にして3秒ほど、俺の心理バイアスで約10秒、俺とハルヒは見つめ合う格好となった。
見つめ合う――――というぐらいだからな。ハルヒのほうも当然それに気が付く。それで何を思ったかハルヒは、不敵な笑み―――それこそ何か良からぬことを思いついた時のような―――を浮かべてこちらを見ている。
ハルヒが顔に貼り付けた表情から、その意図を汲もうと逡巡していたが――――――――
「クキッ」
と、そんな擬音が聞こえてきそうなほどあからさまに無茶な形で右足を地面に着けたハルヒが――――――
転んだ。
「涼宮さん!?大丈夫?!」
そんな名も知らぬクラスメイトの嬌声が俺の耳に届くよりも早く、俺は跳び上がってハルヒの元へと走り出していた。
よくよく考えれば――よく考えなくても――足をひねって転んだのは明白であり、たかだか転倒ぐらいでハルヒが大怪我なんぞするわけないんだが、そんな思考を完全にカットして俺はただハルヒのもとへ駆けつけることしか考えていなかった。
・・・・・・まったく、いつから俺はこんなに毒されちまったんだろうね――――――――涼宮ハルヒという存在に。
俺とハルヒの距離は約20mといったところで、あいつのいる場所へたどり着くのは造作も無いことだった。到着したところであいつの姿をもう1度確認してみると、当たり前っちゃあ当たり前だが、ハルヒは右足首を両手で押さえてうずくまっていた。
「おい、大丈夫かハルヒ?」
「この姿を見てそれは愚問だと思わないのあんたは?」
確かにそうなんだが、相手を心配しているときの常套句だろうが、これは。少しは素直に受け取ったらどうだ。
「あんたの下心丸出しの心配の言葉なんて受け取るに値しないわよ。――――っつ!結構強くひねっちゃったみたいね、結構堪えるわ。」
まあ、俺から見ても明確に判るほどのひねり具合だったからな。もう体育を続けるなんぞ無理だろう。大人しく保健室へ向かうのが賢明だな。
「物事を中途半端にしておくのは本意じゃないけど、こればっかりはあんたの言うことが正しいようね。」
そうこうしてる間に、心配したのか10人ぐらいが集まってきており、中には体育教師も含まれていた。
「足を捻ったのか?」
「そうみたい。このまま続けるのは無理そうだから保健室へ行きたいんだけど。」
「そうだな・・・・。じゃあキョン、涼宮を保健室へ連れて行ってやれ。」
・・・・・。この体育教師までも俺のことをそう呼ぶのか。というか、何故俺がハルヒを保健室へ連れて行くことになっているんだ?普通こういうのは保健委員の仕事じゃないのか?そして周囲のクラスメイト達よ、何こっち見てニヤニヤしていやがる?俺の顔がそんなに面白いか?
・・・・・・・・ってのもただの誤魔化しだな。ここのところ毎朝繰り広げている光景とハルヒ―正確にはSOS団か―の知名度、それらを全てひっくるめて考えればいくら俺でもそれが何を意味するかぐらいはわかるさ。しかしだな、仮にも教育者ともあろう立場の人間がそれを助長しているのは如何なものかと思うんだが。
「ちょっとキョン!何ぼさっと突っ立ってるのよ!?私に手を差し出すぐらいしたらどうなのよ?!」
ああ、悪いハルヒ。だがな、どんなに語気を荒げたところで俺にはわかるぞ?微かに耳が赤くなってるのがな。まったく、たったそれだけでこいつの仏頂面も可愛らしく見えるんだから不思議なもんだ。まぁ、流石にこの衆人環視の中でそれを口に出したりはしないがな。
「悪い悪い。それじゃほら、掴まれ。よし――――――よっ――と。歩けるか?」
「―――――っつ!!!」
「あー、流石に無理か。・・・・・・・・・しょうがない、ほら、背負ってやる。」
「――――!?な、何言ってるのよ?!」
歩けないんだろうがお前は。そろそろ周囲の視線を無視し続けるのもしんどくなってきたから早くしてくれ。
「・・・・・わかったわよ・・・・。たけど、変なとこ触ったりしたらブッ飛ばすわよ?」
耳を真っ赤にし、顔にもわずかに朱が差した状態でそう喚くハルヒは、やっぱり愛くるしくて。俺は苦笑を隠すことなく、ハルヒを背負って保健室へと赴いた。
保健室へと到着し、養護教諭の簡単な触診を受けての診断は軽度の捻挫との事。幸いにも靭帯が断裂している可能性は低いそうで、このまましばらく然るべき措置を受け、2週間ほど無茶をしないでおけば問題は無いそうだ。まあ、こいつに無茶するなという忠告が効くとは思えないんだがな。
なんにせよ、軽度で済んだことは素直に喜ぶべきだろうね。中程度以上だと足を数週間は固定しておく必要があるはずであり。そうなった暁には、ハルヒのフラストレーションが指数関数的に増大し、それに伴って俺に対しても怒涛の如く不機嫌の波が押し寄せてくることになるだろうからな。
「大丈夫か?」
「あんた、さっき言ったこと聞いてないの?ほんっと進歩無いわねぇ。」
だから、んなこたぁ解ってるっつーの。他にどう聞けって言うんだよ?
「それを考えるのがあんたの役目でしょうが。思考することを止めた人間はそこから決して成長することは無いのよ、わかる?」
わかったからそこで大人しくしてろよ?俺は授業に戻るからな。
「えっ・・・・・・・・・。行っちゃうの?」
俺がいなくなるとわかるや否や、さっきまでの威勢はどこへやら、急にしおらしくなったハルヒは「行かないで」オーラ全開、上目遣いでこちらを見ている。
・・・・・・・・しかし、なんつー変わり身の早さだ。計算してやってないだろうな?いやそれよりも、正直たまりません、はい。抱き締めて――――――――というか、このまま持って帰っていいか?
そんなハルヒの様子を見せられては、俺の心も揺らぐというもの。その程度で?とか言う奴、今すぐ出て来い。ハルヒのツンモード及びデレモード、それぞれの特徴分析とその出現割合から導かれるデレモードの重要性について二時間ばかりかけて理解させてやる。
しかしなあ、だからといってこのままここに留まるわけにもいくまい。ニコニコしながらこちらを向いている養護教員がこのまま放っておいてくれるとは思えないし、そんなことしようものなら後で体育教師に大目玉をくらうのは明白だ。
ハルヒを納得させて授業に戻ることが出来るような良い案は無いだろうか?と思考を巡らしていたところ、
「失礼します。」
と、保健室の扉を開く音と共に俺の鼓膜を震わせたのは、いつも昼休みに顔を付き合わせている友人の一人、国木田だった。
「やあ、キョン。涼宮さんは大丈夫かな?」
ああ、特に問題は無いみたいで、このまま安静にしてろってさ。それで、お前はどうしたんだ?怪我でもしたか?
「いや、違うよ。僕はキョンに先生からの伝言を預かってきたんだよ。今日はテストも無いからそのまま涼宮さんに付き添っててもいいぞ、ってね。」
・・・・・・・・・お前、自分が何を言っているのか解ってるか?ほら見ろ、ハルヒは一気に笑顔満開になったし、こっちを向いているもう一つの微笑みも三割増しになっちまったじゃないか。
俺の不平に対し、苦笑をもって返した国木田は、
「そう言われてもね。僕は言われた事を実行したまでさ。涼宮さんも大丈夫のようだし、僕はこれで戻ることにするよ。じゃあ―――――――ごゆっくり。」
・・・・・・・・・・・行っちまいやがった。しかし、ごゆっくりとはまた。普通ならお大事にとかだろうに。ったく、あいつもたまに言葉に冷やかしを込めてくるから困ったもんだ。
・・・さて、俺の保健室残留がめでたく(?)体育教師公認のもととなったわけで、それを押してでも体育の授業に復帰しようなどというスポーツ人間でもない俺が採る選択肢は唯一つだな。
馬鹿みたいに保健室の扉を眺めていた俺は、ハルヒへと向き直る。
そこで俺が見たのは―――――大体予想はついていたんだが―――――真昼の太陽を直視してもここまでは眩しくは無いだろうと思うような、溢れんばかりの笑顔。
「これで体育に戻る理由なんて無くなったわね!」
そう言い放つハルヒの声は、その笑顔に負けない程上機嫌で。
「ああ。」
とだけ答え、ハルヒの俺限定極上スマイルをしばらくの間見つめていた。
この笑顔を、ずっと俺の隣で咲かせてくれることを願いながら――――――――――――――
□
その後、昼休みや午後の授業を迎え、時は午後5時、SOS団活動終了時刻である。
いつも通り、長門が本を閉じるのを合図として、俺と古泉は早々に退散し、朝比奈さんの着替えを待つ。ちなみに、SOS団暗黙の了解として、朝比奈さんが着替え終わって部屋から出てきてもハルヒが付いてこない場合、それは―――俺と二人で帰りたい―――という意思表示ということになっている。
そして本日は――――――――
「キョン君、お待たせしました。涼宮さんは――――中にいるみたい。ふふっ、後はよろしくね?」
そう俺に告げた朝比奈さんは、これまた愛らしい足取りで部室を去り、すぐにそのお姿も見えなくなった。
古泉?なんか言ってた気がするが知らんね。
・・・・・・ふむ、それじゃ俺たちも帰るとしますかね。どうせいつも通り、ハルヒは中で仏頂面―――照れ隠しのつもりなんだろうか?―――で待っているんだろうからな。
そして、ハルヒが根城としてしまったが故に非常に可哀相な目に遭っている扉を開け、部室に入った俺を出迎えたのはいつもの仏頂面ハルヒで、俺の姿を視界に捉えるや否や、
「キョン!ちょっと足が痛いから、私を背負って送りなさい!」
こう仰った。
―――――なあ、ハルヒよ。お前さっきまで何事も無かったかのように暴れまわってなかったか?あと、窓を背にしている筈なのに顔が赤く見えるのは気のせいか?
「べっ、べべ、別に赤くなんて無いわよ!そんなことはいいから、さっさと帰るわよ!ほら、早くしなさい!」
―――――
――――
―――
――
―
とまあ、そんな次第で現在に至るというわけさ。
ちなみにだ、現在時刻は5時半を回ったところで、部活帰りの生徒やら会社帰りのサラリーマンやら、人通りは少ないとは言いがたい。そんな衆人環視の中、大の男子高校生が女子高校生を背負って歩けば当然注目を浴びるというもので、周囲の視線が非常に痛い。さらに、もともとハルヒは黙っていれば超が付くほどの美人だ。こいつと接したことの無い――――ある意味幸せな――――一般人たちからは、怨念のようなものまで発せられる始末で非常に居心地が悪い。
――――そんな周囲から向けられる好奇の視線の中、ハルヒを背負った俺は、背中の温もりを噛み締めるように、ゆっくりとハイキングコースを下っていく。
ハルヒの不平不満をBGMに、決して楽とは言えないハルヒ宅への道を歩んでいたのだが、不意に後ろからの声がやみ、何を思ったかハルヒは、俺の体に自分のそれをグリグリと押し付け始めた。
「んーー。あったかーーーい。」
そう惚けた声を出したっきり、ハルヒは黙り込んでしまっている。
・・・・・・・・あのー、ハルヒさん?あんまりそういうことされると、背中に柔らかいものが当たって俺の精神衛生上あまりよろしくないんですが。
「――――!!こんの、エロキョン!あんた何考えてるのよ?!」
そう言われてもね。やってきたのはお前だろう?嫌なら体を離せばいいじゃないか。
「うっ。・・・・・まあ・・・・、別にいいわ。減るもんでもないしね。」
減らなければいいってものか?
「・・・・・・・・・はあ・・・・・、本当にあんたって奴は。こんなこと、キョン限定に決まってるじゃないの。本当に救い難いほどの朴念仁ぶりね。」
そうかい、そりゃ悪かったな。まあ、実際、お前が他の男とどうこうなんていうこと、想像しただけで俺の精神は谷底へ叩き落されるような気分になるから、そう聞けて嬉しくはあるがな。
「ふふん。それはこれからのあんたの努力次第ね。」
へいへい、せいぜい精進させていただきますよ。
「大変素直でよろしい。」
そう嬉々として話すハルヒの声を聞きながら、俺はハルヒの家へと向かって歩んでいく。
明日の朝はどんな切り口で行こうかな?なんて考えながら――――――
□
翌日――――――――
俺がハルヒを背負って歩いている様子を撮影した画像データが、メールでSOS団員と名誉顧問である鶴屋さんのもとへと送られ、放課後に集中砲火を浴びることとなった、というのはまた別の話。
長門よ、これはどういうことだ?
「・・・禁則事項。」
そうかい。
えーっと。なに書いてるんだろうorz
今回の反省点:
キョンの性格おかしい
ハルヒもおかしい
だから、プロット書けって
文章力どうにかならねえのか?
今回も、なにかこうしたほうがいい、ここが変だ、などお気づきの点がありましたら是非ご一報ください(info@ssgi.infoにて直接受け付けております)。
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